移行乳(transition milk)とは

※昔のcalfnutritionの記事を少し改定したものを掲載しています。

「移行乳」の定義を海外論文などで検索すると「分娩後2回~6回目までの搾乳した生乳」とされており、分娩後の1回目の搾乳時の生乳は「初乳」と呼ばれます。

日本の定義でいうとざっくり「初乳のあとの分娩後4-5日までの乳」のこと。初乳ほど有用成分(免疫、ホルモン、ビタミン等)は濃くないけどだんだんと初乳から薄まって常乳になっていく、そんな移行段階の生乳のこと、という理解です。

初乳と常乳の成分の違いはこちら(P23ご参照)。移行乳は中間程度と思っていいかと。

http://jlia.lin.gr.jp/hi_wakaushi/pdf/2-2-1.pdf

移行乳の定義1(Veterinary Clinics of North America: Food Animal Practice Colostrum Management for Dairy Calves)

Volume 24, Issue 1, March 2008, Pages 19-39初乳の重要な成分には、免疫グロブリン、母白血球、成長因子、ホルモン、サイトカイン、非特異的抗菌因子、および栄養素が含まれます。これらの成分の多くの濃度は、出産後に採取される最初の分泌物(初乳)で最大であり、次の6回の搾乳(移行乳)で着実に減少し、その後販売可能な全乳で日常的に測定されるレベルに落ち着く。https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0749072007000758

これでいうと1日2回搾乳なら分娩後3-4日までの乳を「移行乳」と言うそう。日本のイメージでいうともう少し長いイメージ。

移行乳の定義2(乳等省令から)

日本では「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=326M50000100052                           「別表2:次の各号のいずれかに該当する牛、山羊又はめん羊から乳を搾取してはならないこと」の項目の一つに「分娩後5日以内のもの」が含まれているため、分娩後2回目の搾乳分~分娩後5日以内のもの、を指すことが多いのではないかと思います。

移行乳の定義3(家畜感染症学会編 子牛の科学)

子牛のバイブル、家畜感染症学会編「子牛の科学」P81から引用しますと「分娩後に初めて分泌される乳汁を初乳といい、常乳になるまでの4-5日間に泌乳されるものは移行乳として区分されている」ということでした。

海外の方が気持ち短めの設定なのはなんでだろう。海外の分娩後の出荷制限日数などと関係しているのかな?

移行乳の給与

移行乳の給与はメリットたくさん。基本的には絶対給与した方が牛としてはメリットがあると考えられます。その理由としては下記の引用文献で報告されている通り、下痢が減る、増体が増える、といった報告があります。

デメリットとすると、手間が増える。分娩後数日のみの子牛数頭だけ違うものを与えるというのは、作業上手間になる場合が多いです。私が哺乳担当だったら、特に下痢に困っているなどといったことがなければ、正直、少し増体が良くなるからと言われても数頭分だけ移行乳をパスチャライズして給与するとか面倒なので嫌だ…。

初乳粉末の添加

「移行乳」というトピックですが、通常の代用乳(粉ミルク)に初乳粉末を添加した試験結果も混ぜて掲載しています。

親付けでない肉用子牛、ヌレ子で買ってきた場合、搾乳牛でも子牛へ移行乳給与が難しい場合などでは、代用乳に初乳粉末を別途後から添加するというのも、移行乳を再現する手法です。

初乳粉末の添加で下痢低減1

哺乳初期初乳粉末の添加で消化器病発症率が低減。初乳粉末添加量はIgGとして20g、初乳粉末(サスカトゥーン社)として140g/日/頭。プラセボ群とはIgGの含まれないただの代用乳を添加した区(試験委託先の農場サイドには中身がプラセボと教えず)。

Evaluation of the effects of oral colostrum supplementation during the first fourteen days on the health and performance of preweaned calves – PMC

頭数下痢日数治療日数
初乳添加区916.1%8.2%
プラセボ区9010.7%12.3%
無添加区929.7%10.6%

初乳粉末の添加で下痢低減2

腸管の炎症を抑えることで、下痢のみならず呼吸器病変や臍疾患も有意に減少したという考察。

初乳粉末添加(サスカトゥーン社)1日300g添加のためかなり多め。

初乳粉末の添加で増体アップ1

●T90:哺乳子牛への初乳代用乳の添加が増体と下痢に及ぼす影響:

Performance and diarrhea occurence of suckling calves supplemented with colostrum replacer.ADSA annual meeting,June 23-26.2019.Abstract.P220 (著者) V.Chiogna Junior,M.Rodrigues,and E Collao-Saenz

引用:試験区に生後1-5日の間のみ60gの初乳粉末を添加したところ、離乳時体重は有意に試験区が高く、離乳までの日増体重も高かった(対照区0.78kg、試験区0.86kg) ⇒生後1-5日齢の初乳粉末添加は離乳前の体重とADGを増加させる。

移行乳の添加で増体アップ2

●T91:乳用子牛の健康と成長への移行乳給与の影響:Effect of feeding transition milk on growth and health of dairy calves. ADSA annual meeting,June 23-26.2019.Abstract.P220

引用:代用乳区、移行乳区、混合区(代用乳と移行乳を1:1で混合)を用意。生後2-4日の3日間は各試験区のミルクを与え、5日齢からは全て同様の管理を行った。哺乳初期3週間のADGは、それぞれ代用乳0.41kg/d、移行乳0.49kg/d、代用乳と移行乳の混合区0.45kg/d(P=0.06)であった。

生後2-4日の3日間移行乳を給与することは子牛の増体を向上させる。


色々とデータを見てきたけど…

結局どうしたらいいのか…というあなた!

ズバリ言うわよ(古い)

❤増体を促進させたいなら、分娩後3日間は移行乳(初乳と粉ミルクを半分ずつでも可)

❤消化器病の予防させたいなら、1日IgG20g供給

その根拠となるのが以下2つ


初乳、移行乳(初乳と全乳を50%ずつ混合したもの)を分娩後3日間給与すると腸の成熟を促進

試験設定:それぞれ分娩後2時間後に初乳を給与してから試験スタート、
分娩後12-72時間を試験期間として12時間に1回の頻度で各試験区のミルクを給与

引用: 分娩後3日間、”全乳のみをあげた区(C)”と比較すると、”初乳を給与した区(A)”と”初乳と全乳を半半で混ぜたもの(移行乳をイメージ)を給与した区(B)”では腸の成熟を促進、具体的には絨毛の高さアップ&消化管表面積が増加(たとえば全乳区では空腸近位において初乳区の60%減&初乳+全乳区の58%減)。血中のホルモンGLP-2とIGF-1も増加

A)初乳給与区 B)初乳と全乳を半分ずつ混合した区 c)全乳区

哺乳初期2週間の消化器病低減のための添加量はIgGとして1日1頭20g

The effect of feeding a whey-based colostrum replacer product to calves during the first two weeks of life on calf heath and performance – PMC

直近の論文で何と言ってもものすごおいn数での試験!哺乳初期14日間のホエイベース由来のIgG添加が何gが疾病低減に寄与するかを確認した試験。46 gのCR(1日20 gのIgG)の添加は、23 gのCR(10 gのIgG;CR10)の添加よりも、疾病、抗生物質の使用、および死亡率の低減においてより大きな効果をもたらした。

notebook LMに作ってもらいました👇内容が間違っていないことは確認済